足場で押さえるべき法令は、「労働安全衛生法」です。
法令・法律というと堅苦しいイメージでとっつきにくいですが、必ず守らなければならないルールですので、しっかり理解しておく必要があります。
ここでは、そもそも法律がどのようにできているか、というところをメインに、法律の体系について解説します。
法律とは
法律は、国会の議決を経て制定されます。
代表的な法律として、「憲法」・「民法」・「商法」・「民事訴訟法」・「刑法」・「刑事訴訟法」の6つは「基本六法」と呼ばれ、法学部の授業で学ぶ主要科目とされています。
我々の生活に直接関わるところでは、「道路交通法」「消防法」、仕事の面では「労働基準法」や「下請法」などもよく耳にするところだと思います。
私が従事しているプラント関係ですと、「電気事業法」や「建設業法」などもよく耳にする法律です。
現在、全部でおよそ1900件の法律があるそうです。これほどたくさんの法律があるとは、私も知りませんでした。
足場のことを定めた「労働安全衛生法」も、国会で定められた法律の1つです。
労働安全衛生法から、足場に関連しそうな部分を抜粋してみます。
労働安全衛生法
第十四条
事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。第二十条
事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険
二 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
三 電気、熱その他のエネルギーによる危険第二十一条
事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。第二十四条
事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。第二十五条
事業者は、労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない。第二十六条
労働者は、事業者が第二十条から第二十五条まで及び前条第一項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。第二十七条
第二十条から第二十五条まで及び第二十五条の二第一項の規定により事業者が講ずべき措置及び前条の規定により労働者が守らなければならない事項は、厚生労働省令で定める。第二十九条
元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない。
2 元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行なわなければならない。
3 前項の指示を受けた関係請負人又はその労働者は、当該指示に従わなければならない。第五十九条
引用元: e-Gov法令検索
事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
以上のように、労働安全衛生法では、細かいルールが法律に規定されているわけではなく、「事業者が対策を講じること」、や「労働者が必要な措置を守ること」などの大枠が定められています。
政令・施行令とは
「労働安全衛生法施行令」というものがありますが、施行令とは、「政令」と呼ばれるもので、内閣が制定する命令です。
そもそも国の法律を作るのは国会の役目であり、内閣がルールを作るというのがあまりしっくり来ないのですが、これは、法律の中で、「この部分は法律ではなく、内閣でルールを決めます。」というように法律の中で委任した場合に、行政でルールを作ることできるようになっており、そうやって行政で作ったものを政令と呼びます。
労働安全衛生法施行令から、足場に関連しそうな部分を抜粋してみます。
労働安全衛生法施行令
第六条
法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
十五 つり足場(ゴンドラのつり足場を除く。以下同じ。)、張出し足場又は高さが五メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業第十三条
3 法第四十二条の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。
十一 別表第八に掲げる鋼管足場用の部材及び附属金具
十二 つり足場用のつりチェーン及びつり枠
十三 合板足場板(アピトン又はカポールをフェノール樹脂等により接着したものに限る。)別表第八
引用元: e-Gov法令検索
鋼管足場用の部材及び附属金具(第十三条関係)
一 わく組足場用の部材
1 建わく(簡易わくを含む。)
2 交さ筋かい
3 布わく
4 床付き布わく
5 持送りわく
二 布板一側足場用の布板及びその支持金具
三 移動式足場用の建わく(第一号の1に該当するものを除く。)及び脚輪
四 壁つなぎ用金具
五 継手金具
1 わく組足場用の建わくの脚柱ジヨイント
2 わく組足場用の建わくのアームロツク
3 単管足場用の単管ジヨイント
六 緊結金具
1 直交型クランプ
2 自在型クランプ
七 ベース金具
1 固定型ベース金具
2 ジヤツキ型ベース金具
以上のように、労働安全衛生法施行令では、労働安全衛生法に従って、作業主任者を選任することや、安全装置を具備しなければならないものとして、「足場」をしっかりと指定しています。
省令・施行規則とは
更に、「労働安全衛生規則」というものがあります。これは、「省令」と呼ばれるもので、各省庁の大臣が発する命令です。
内閣が制定する政令よりも効力は低く、法律の円滑な運用をはかるために、各省が所管の行政事務について制定する命令です。
足場に関する細かなルールは、大部分が労働安全衛生規則で規定されています。
※詳細は別記事にてご紹介します。
法令はピラミッド構造
これまで出てきた法律・政令・省令を含め、法体系を整理すると以下の図のように、ピラミッド構造という風に理解できます。上に行くに従って力の大きなものとなります。
最も大きなものが最高法規である憲法、次が国会で採決される法律、そして政令、省令と続きます。イメージとしては、「法律」「施行令」「施行規則」の順番で細かくなっていき、法律の曖昧さを施行令で補い、さらに詳細な部分を施行規則で明確化するという形になっています。
どこで見ることができる?
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