誘導モータが動く原理 3ステップ【アラゴーの円盤】

モータ

みなさんこんにちは。

プラント業界では多くのモータが使用されていますが、その多くは、「誘導モータ」と呼ばれる種類もモータです。誘導モータのしくみを説明するために、「アラゴーの円盤」というものが良く使われます。アラゴーの円盤を知っていれば、モータがどうやって動くのか知るための参考になるでしょう。

この記事では、「アラゴーの円盤」が回転する原理を解説します。

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アラゴーの円盤とは?

アラゴーの円盤とは何か。ウィキペディアでは以下のように説明されています。

アラゴーの円盤とは、物理学者フランソワ・アラゴーが1824年に発見した、磁石と良導体(低抵抗の電気伝導体)との間に起きる現象である。

この現象の簡単な実験例としては、円盤状の金属板などの電気伝導体に、U字型などの、NとSの両極を円盤にごくわずかな間隙で接させることができる磁石を配置し、その磁石を回転させると、伝導体の円盤の側は非磁性であるにもかかわらず、磁石と同方向に回転するというものである。


引用元: ウィキペディア

以下の図のような円盤を考えます。円盤は導体(電気を通すもの)であれば大丈夫です。磁石が付く必要はありません。銅やアルミなどを考えると良いです。

この円盤へ、磁石を近づけます。

磁石を円盤に沿って動かします。今回は、反時計回りに動かしてみます。

すると、円盤が、磁石が動いた方向(反時計回り)にゆっくり回ります。

これが、「アラゴーの円盤」の現象です。

ここで動作のポイントを整理します。

  • 磁石を円盤に沿って動かすと、円盤は磁石と同じ方向に回る。
  • 円盤は、電気を通すもの(導体)であれば良い。磁石が付かなくても良い(非磁性)。
  • 円盤の回転は、磁石の回転より遅い。

アラゴーの円盤が回転する原理 3ステップ

円盤に沿って磁石を動かすと、なぜ円盤が回るのか、その原理を解説します。

ステップ1. 磁石を動かす=磁界の変化

先ずは、円盤の上で磁石を動かします。ここでは、下の絵のように①から②へ、反時計回りに動かしたことにします。

磁石の周りには磁界があり、N極からS極へ向かって発生しています。磁石を①から②へ動かすと、円盤の周りで磁界の変化が起こります。円盤の①の場所では磁界が弱くなり、②の場所では磁界が強くなります。

ステップ2. 磁界の変化を打ち消す「誘導電流」

磁石が動くことで、円盤の周りで磁界の変化が起こりますが、円盤の中では「磁界の変化を打ち消す」動きが起こります。

①の場所では、磁石が離れることで、下向きの磁束が減少します。円盤は、磁束の減少を打ち消す方向=下向きの磁束を増加させる方向へ、動きが起こります。つまり、時計回りに渦電流が発生します。

②の場所では、磁石が近づくことで、下向きの磁束が増加します。円盤は、磁束の増加を打ち消す方向=上向きの磁束を増加させる方向へ、変化が起こります。つまり、反時計回りに渦電流が発生します。

①と②の場所では局部的に逆向きの渦電流が流れますが、ちょうど中間付近(磁石の近く)では、円盤の中心から外側へ向かって電流が流れることになります(下の絵の真ん中の矢印)。これが、磁界の変化によって生まれた「誘導電流」です。

補足ですが、電流の向きと磁界の向きの間には、右ねじの法則があります。電流が流れていれば、右ねじを押し込む方向へ磁界が発生し、磁界があれば、右ねじを押し込む方向へ電流がながれます。電流と磁界の向きを考えるときに便利な法則です。

ステップ3. フレミング左手の法則で磁石の方向へ円盤が回る

磁石の周りで電流が流れると、次に力が発生します。これは、「フレミング左手の法則」で考えることができます。フレミング左手の法則は、左手を下の絵のような形にしたときに、電流の向きを中指、磁界の向きを人差し指として、親指の方向に力がかかるという法則です。

円盤の周りでは、

電流:円盤の中心から外側へ

磁界:下向き

なので、円盤には、右向き=反時計回りの方向へ力がかかり、回ります。磁石は①から②へ、反時計回りに動かしたので、円盤は磁石と同じ方向へ動くことになります。

これが、円盤が回る原理です。

ポイント

円盤が回る原理をまとめると、

ステップ1:磁石を動かして、磁界の変化を与える

ステップ2:磁界の変化を打ち消すように、導体の中で誘導電流が流れる

ステップ3:磁界と電流で力が発生する。力の方向は磁石が動いたのと同じ方向

ということになります。

ステップ1では、「磁界の変化」が必要なので、実は円盤は磁石と同じ速さにはなりません。同じ速さになると、円盤の周りで磁界の変化がないことになりますからね。円盤は、磁石の動きより少し遅れて回ります。少し遅れていることによって、常に磁界の変化が発生しています。磁石と円盤のスピードの差を「すべり」と呼びます。

ステップ2で、円盤の中で誘導電流を発生させる必要がありますので、円盤は導体である必要があります。導体でなければ誘導電流が流れませんからね。

ステップ3の力の向きは、フレミング左手の法則で考えれば考えやすいですが、結局のところ、「磁石と同じ向き」ということがわかり易いですね。あたかも磁石に引き寄せられたように見えるのが面白いところです。でも、磁石が付かない銅やアルミでも引き寄せられたように見えるから、不思議です。

まとめ

この記事では、「アラゴーの円盤」が回転する原理を解説してきました。

ステップ1:磁石を動かす=磁界の変化

ステップ2:磁界の変化を打ち消す「誘導電流」

ステップ3:フレミング左手の法則で磁石の方向へ円盤が回る

参考になればうれしいです。
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