【トリップとは?】プラント業界の常識をわかり易く解説

ポンプ

みなさんこんにちは。

突然ですが、「トリップ」とは、一般的には旅行の意味で使われますが、プラント業界では全く異なる意味で使われることをご存じでしょうか。

プラント業界でトリップという言葉はとても一般的な用語として使うのですが、教科書などで解説されておらず、初めて聞く人は何のことかわからないと思います。

今回は、プラント業界でのトリップという用語を解説します。

スポンサーリンク

プラント業界でのトリップの意味

プラント業界では、「トリップ」という言葉は、「保護機能が働いて機器が緊急停止すること」を意味します。

例えば、家庭のブレーカで考えてみます。
家庭で電化製品を一度に使い過ぎると、自動的にブレーカが落ちますが、これも「トリップ」の一種です。
回路に過度な電流が流れると発熱や発火の危険があるため、20A等の電流が流れるとブレーカが自動的に回路を遮断する機能を持っています。
この自動的に回路を遮断する機能が、「保護機能」にあたり、ブレーカが落ちて回路を遮断することが、「緊急停止」にあたります。
家庭で電化製品を一度に使い過ぎた結果、自動的に回路が遮断されることを、「ブレーカがトリップする」という表現をします。

トリップの対象と保護機能

トリップの対象となる機器は、ブレーカ、モータ、ポンプ、ファンなどのプラント構成機器の場合もありますし、発電プラントであれば、タービンや発電機などのプラント主要機器の場合もあります。

また、プラント全体を指す場合もあります。プラントの運転に重大な問題がある場合、保護装置が働いてプラント全体の運転が停止することがあります。この場合、「プラントトリップ」となります。

  1. ブレーカトリップ=ブレーカを保護するために回路を遮断
  2. ポンプトリップ=ポンプを保護するためにポンプの運転を停止
  3. タービントリップ=タービンを保護するためにタービンの駆動源を遮断
  4. 発電機トリップ=発電機を保護するために発電を停止
  5. プラントトリップ=プラントを保護するためプラントの機能を停止

保護機能は、保護する対象によって異なります。
例えばブレーカの場合、異常な電流や電圧などから保護するために保護機能を付け、ポンプの場合は圧力、温度、振動などを計測し、ポンプが通常の運転範囲を逸脱した場合に緊急停止させる機構を設けます。
保護する対象と目的により、適切な保護機能を用いる必要があります。

トリップ ≠ 旅行?

トリップは一般的に、旅、旅行、移動、出かけること、などの意味で使われます。
プラント業界で使用される、「保護機能が働いて機器が緊急停止すること」という意味とは全く異なっています。
どういうことでしょうか。

辞書で調べると、以下のようなものが出てきます。

trip

[名] 

  1. 〔休暇や商用の〕旅、旅行、遠出
  2. 〔近距離の〕移動
  3. 〔ある目的で〕出かけること、訪問
  4. 〔つまずいて〕転ぶこと、つまずき
  5. 〔人を〕つまずかせること[技]
  6. 軽い足取り[ステップ]
  7. 間違い、しくじり、過ち
  8. 《機械》歯止め
  9. 〈俗〉〔麻薬による〕幻覚体験、トリップ
  10. 〈俗〉〔一時的に熱中する〕趣味、関心事
  11. 〈俗〉面白い[変わった]こと[もの・人]
  12. 〈俗〉強烈[刺激的]な体験

引用元:英辞郎 on the WEB

8つ目の「機械的な歯止め」の意味があり、これがプラント業界のトリップの意味だと思います。また、4つ目と5つ目には、「つまづいて転ぶ」といった意味がありますが、これも、「保護装置に引っかかって失敗する」といったイメージと近いです。

ちなみに、トリップという言葉を使うのは日本のプラント業界だけではなく、海外のプラント業界でも使います。意味も同じです。

でも、日本人は「トリップ」といえば「旅行」のイメージが強いため、歯止めと言われてもイメージがわかないですね・・・

私のトリップの解釈

先に見たように、トリップにはスラングで覚醒剤などにより幻覚を見るという意味もあります。

私はこれとプラントでのトリップを結びつけて、「違う世界に行く、飛ぶ」といったイメージで関連付けていました。実際プラント業界でも、トリップすることを「飛ぶ」などと俗語的に言うことがあります。

私はトリップと言う言葉に、以下の動画のように、プツンと消えてなくなるイメージを持っています。本来の使い方とは異なりますが、イメージしやすいのではないかと思います。

引用元:Youtube(Cheap Graphics)

私の仮説ですが、ネイティブで英語を使う方々には「トリップ=つまづく」という意味が含まれることを認識しており、スラングができるよりもっと昔、例えば、蒸気機関が発明されたような時代から、緊急停止させる歯止めとして様々な機構を導入した結果、トリップという言葉が使われてきたのではないかと思います。

まとめ

この記事では、プラント業界でのトリップという用語を解説してきました。

トリップとは、保護機能が働いて機器が緊急停止すること。

参考になればうれしいです。
ご指摘・ご質問・ご要望などあれば遠慮なくお問い合わせください。

タイトルとURLをコピーしました