みなさん、こんにちは
最近暑いですね。朝のニュースを見ると、毎日のように「熱中症警戒アラート」が発令されています。温暖化の影響もあるのでしょう。でも「熱中症警戒アラート」というのは最近になって目にするようになった気がします。
熱中症警戒アラートは、「WBGT」や「暑さ指数」という指標にもとづいて発令されています。
この記事では、熱中症を予防することを目的に使われるWBGT(暑さ指数)の、意味と計測方法について、解説します。
WBGT(暑さ指数)とは?
WBGTとは、“Wet-bult Globe Temperature”の略で、アメリカで提案された指標です。
WBGTを日本語で直訳すると、「湿球黒球温度」となりますが、環境庁はこれを一般的にするため、「暑さ指数」と称しています。
WBGTは、熱中症を予防することを目的に導入されたものです。
1954年、アメリカ合衆国サウスカロライナ州パリスアイランドにあるパリス・アイランド訓練所で導入された。サウスカロライナ州は温暖湿潤気候にあるが、パリスアイランドなどの標高の高い地域は大西洋岸よりも温帯の性格が少なく夏は高温多湿となるため訓練中に熱中症となるリスクが高いことから、予防措置としてWBGTを導入した。
引用元:ウィキペディア
WBGTの詳細
WBGTがどのような指標なのか、解説していきます。
WBGTは以下の写真のように計測します。左の写真では、黄色い温度計が3本あり、それぞれで異なる3つの温度を計測しています。(環境省HPより抜粋)
引用元:熱中症予防情報サイト(環境省)
黒球温度 (Globe Temperatue : GT)
黒球温度は、上の写真で左側にあるものです。
直径15 cmの薄い銅板製で表面に黒のつや消し塗装が施された球の、中心に温度計を内蔵しています。このように計測することで、日射や輻射熱による影響も黒球で吸収して計測することができます。また、風の影響も受けます。
黒球温度計は、日向での体感温度を良く表しています。
湿球温度 (Wet-bulb Temperature : WB)
黒球温度は、上の写真で右側にあるものです。
濡れたガーゼを温度計に巻いて計測しています。ガーゼの水分が蒸発するときに熱(気化熱)が奪われるため、乾球温度(気温)より低くなり、大気が乾燥している時ほど乾球温度との差が大きくなります。また、風の影響も受けます。
湿球温度は、体の汗が蒸発する時に感じる涼しさを良く表しています。
乾球温度 (Dry-bulb Temperature : DB)
乾球温度とは、普通の温度計で気温を計測しています。(写真の中央)
ちなみに、上の写真では、湿球温度と乾球温度を、「オーガスト乾湿計」という計測器で計測しています。オーガスト乾湿計は、湿球温度と乾球温度を計測し、真ん中に記載された一覧表から湿度を読み取ることができるようになっています。
WBGTの計算
計測した黒球温度、湿球温度、乾球温度を使い、WBGTを計算します。WBGTの定義は以下の通りです。WBGTの単位は他の温度と同じ(℃)です。
日射がある場合:
WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度(気温)
日射がない場合:
WBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
上の式のように、WBGTの7割は湿球温度です。暑さ指数としては湿度の影響が強く反映されていると言えます。
大気が乾燥していれば、湿球温度は大きく下がります。これは、肌の表面から汗をかくことで体温が下がり、快適になりることを表しています。湿球温度が高い場合、どれだけ汗をかいても気化しないため、体温が下がらずに蒸し暑いままです。湿球温度は、発汗などで自然に体温をさげることができる限界点と言えます。WBGTの7割が湿球温度で構成されていることが、納得できるのではないでしょうか。
また、上の式のように、日射(直射日光)がある時とない時で、使用する式に違いがあります。
JIS Z8504によると、もともとは日射がない環境下では湿球温度と黒球温度の式で評価できましたが、これを日射がある環境下に使用した場合に、黒球温度の放射が過大評価される傾向を補正するため、乾球温度(気温)を導入した式が作られたようです。従い、日射の有無で使用する式を切り替える必要があります。WBGTの略称の中に、Dry-bulb Temperatue (DB) が出てこないのも、そのためでしょうね。
WBGTによる熱中症予防
熱中症予防の指針
以下のグラフは、主要都市の救急搬送データをもとに、1日の最高WBGTと熱中症患者発生率の関係を示したものです。(環境省HPより抜粋)
WBGTが28℃を超えると、熱中症患者が著しく増加することがわかります。
引用元:熱中症予防情報サイト(環境省)
以下の表も環境省HPからの抜粋ですが、WBGTが25℃以上で「警戒」、28℃以上で「厳重警戒」、31℃以上で「危険」として、注意を呼び掛けています。
引用元:熱中症予防情報サイト(環境省)
熱中症を予防するため、WBGTの値に注意し、高い場合には適切な対策をとる必要があります。
全国のWBGT
自分が住む地域のWBGTの値は、環境省の「熱中症予防情報サイト」で見ることができます。測定装置を持っていなくても、サイトで自分の地域を確認することで、参考にすることができますね。
引用元:熱中症予防情報サイト(環境省)
尚、環境省のデータは全国に計840地点あり、そのうち11地点は黒球温度などを実測しており、残る829地点は気温、相対湿度、全天日射量、平均風速などの天候データからWBGTを推定しています。(2023年8月時点)
さらに、天気予報のデータを使い、WBGTの予測値を計算しています。
熱中症警戒アラート
WBGTの予測値をもとに、「熱中症警戒アラート」が発信されます。熱中症の危険性が極めて高くなることが予測された場合に、気象庁と環境省が共同で発表しているものです。
前日の17時頃と当日の5時頃に最新のデータをもとにWBGTが予測され、WBGTが33℃以上になると予測された場合に、「熱中症警戒アラート」が発表されます。
2020年7月から関東甲信地方で試行され、2021年年4月からは全国を対象に運用を開始しています。
引用元:熱中症予防情報サイト(環境省)
「熱中症警戒アラート」が発表された当日は、WBGT 31℃以上の「危険」レベルを超えますので、熱中症には十分に注意して行動する必要があります。
現場で・自分で測定するには
現場でWBGTを測定する場合や、自分でWBGTを測定したい場合、WBGTを測定する装置が必要です。国際規格に従い、黒球温度、湿球温度、乾球温度を正しく測定してWBGTを算出するのが最も精度良く測定できますが、装置は高価となりますので、簡易的に気温や湿度などからWBGTの推定値を出すものが出回っています。
WBGT測定器をいくつかご紹介します。
注意点として、屋外での日射や輻射熱の影響を測定するには黒球は欠かせないため、現場のWBGTを正確に測定するには「黒球付き」の計測器が必須です。黒球のないWBGT測定器は、日射や輻射熱の影響のない、熱源のない屋内でしか使用できないと考えてください。
以下のように、現場で掲示するための看板がセットになったものもあります。
以下はハンディタイプです。
まとめ
この記事では、熱中症を予防することを目的に使われる、「WBGT(暑さ指数)」とその計測方法について、解説してきました。
- 暑さ指数WBGT =Wet-bult Globe Temperature (黒球湿球温度) 熱中症を予防することを目的とした指数。
- 日射がある場合:WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度(気温)
日射がない場合:WBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度 - WBGTは7割が湿球温度。発汗などで自然に体温をさげることができる限界点。
- WBGTが28℃以上で熱中症患者が増える「厳重警戒」レベル
- 環境省の「熱中症予防情報サイト」でWBGTや熱中症警戒アラートが参考になる。
- 自分で測定する場合、黒球が付いたものを使う。
参考になればうれしいです。
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