ポンプをキャビテーションから守るには、NPSHを確認しなければなりません。プラント設計時にも、ポンプを運転する時にも、絶対確認しないといけないことです。
NPSHを確認する時には、NPSHaとNPSH3という言葉が出てきますが、違いを理解する必要があります。
この記事ではNPSHとは何か、NPSHaとNPSH3の違いについて解説します。
キャビテーションについて、詳しくはこちらをご覧ください。
NPSH=Net Positive Suction Head
正味有効吸込みヘッド
正味(Net)は、流体の飽和蒸気圧を除いているという意味で、有効(Positive)は、絶対真空をゼロとしているという意味です。
NPSHがゼロだと、内部流体が沸騰して気体になってしまい、全く吸い込めない。という限界点です。
ヘッドについては、こちらをご覧ください。
NPSH3とNPSHaの違いとその関係
NPSHを実際の仕事に使うには、NPSH3とNPSHaの違いを理解し、比較する必要があります。
NPSH3とNPSHaの違いを詳しく見ていきましょう。
NPSH3:必要吸い込みヘッド
NPSH3は、日本語では「必要吸込みヘッド」と呼ばれます。
必要吸込みヘッド=NPSH required ですので、NPSHreqと表記していたのですが、NPSH3と表記されるようになりました。
NPSH3は、全揚程が3%下がる吸込みヘッドを意味しています。3%の「3」です。
この値は、ポンプ運転中に吸い込みヘッドを徐々に下げていき、実際に全揚程が3%下がる値を計測して求めています。つまり、NPSH3はポンプメーカーの試験で計測される値であり、ポンプが持つ固有の特性です。
ポンプが汲み上げ能力を失い始める点を求めたもので、「ここまで吸込みヘッドを下げると、性能が3%落ちますよ」ということをポンプ側が教えてくれる情報です。
NPSHa:有効吸い込みヘッド
NPSHaは、日本語では「有効吸込みヘッド」と呼ばれます。
有効吸込みヘッド=NPSH available であり、availableの頭文字のaを用いて、NPSHaと表記されます。
NPSHaは実際にポンプの周りにあり、ポンプが利用できる吸い込みヘッドを表しています。
つまり、NPSHaは系統側の状態を示したものであり、プラント設計者の設計や、運転員の操作によってある程度の増減ができます。
例えば、ポンプの吸込み水を貯めるタンクの位置を高く設置すること、吸込み水の水位を高く保つこと、ポンプの設置位置を低くすること、吸込みタンクに窒素などのガスで加圧することなどが考えられます。
NPSH3とNPSHaの関係
まとめると、
NPSH3=必要吸込みヘッド(ポンプ固有の特性)
NPSHa=有効吸込みヘッド(プラント側の状態)
ということになります。
従い、常に以下の関係を保つ必要があります。
NPSHa > NPSH3
NPSHの確認方法
<NPSH3>
ポンプの性能曲線に記載されている
<NPSHa>
NPSHaはポンプメーカから提示されたNPSH3の値を元に、ユーザ側が条件を作る。
-
系統設計の時に吸い込みタンクの位置や高さ、ポンプの設置位置を決める。
-
運転の時に十分な吸い込みヘッドがあることを確認する。
まとめ
- NPSHはキャビテーションを発生させないために確認すべき指標
- NPSH3はポンプが持つ特性で、性能曲線に記載されている
- NPSHaはユーザー側・系統側の条件で、作りこむもの
- NPSHa>NPSH3であることを確認する