ポンプのキャビテーションとは? 原理・影響・対策方法を解説

ポンプ
 
こんにちは。
 
皆さんは、「キャビテーション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。プラントの運転に関わる方は一度は耳にしたことがあるかもしれません。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、無視していると、時間をかけて機器の損傷を招く原因になります。
 
この記事では、ポンプの運転で発生するキャビテーションについて、解説します。
 
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キャビテーションとは

キャビテーションは、英語で”cavitation”と書きますが、これを日本語に直訳すると「空洞現象」です。
流体の中に空洞ができる現象を表しています。
ここで注意が必要なのは、これは水の中に混ざった空気による空洞ではなく、水から発生した蒸気による空洞を主に指しています。つまり、沸騰現象と近い原理になっています。
 
キャビテーションの原理について、詳しく解説します。

キャビテーションの原理(ポイント3つ)

キャビテーションの原理は以下の通りです。
  1. ポンプ内部で水の流速が早くなり、圧力が低下する。
  2. その圧力が水の飽和蒸気圧力を下回ると、水が蒸気化する。
  3. 圧力が高い場所で気体が液体に戻るとき、体積が急激に変化してポンプに衝撃を与える。

ポイントを1つずつ見ていきます。

その1.圧力低下

ポンプの内部では、部分的に水の流速が早くなる部分がありますが、流速が早くなる場所では水の圧力が低下してしまいます(ベルヌーイの定理)。
特に、ポンプの吸込み部分では圧力低下が発生しやすい傾向があります。

その2.飽和蒸気圧力

水の圧力が下がると、気体になりやすくなります。
いつ気体になるかというのは、飽和蒸気の特性によって決まります。
1気圧での水の飽和蒸気温度は100℃のため、100℃で沸騰しますが、例えば富士山の上では気圧が1気圧より低いため、88℃ぐらいで沸騰したりします。
圧力がさらに低くなると、常温でも沸騰が起こるようになります。
 
つまり、水が蒸気化するのは、水の圧力がその時の温度における飽和蒸気圧力を下回った時、ということです。
 
 

その3.衝撃波

水がポンプ内部をさらに進むと、圧力が上昇しますので、発生した蒸気が水に戻ります。
このとき、急激な体積の変化が起き、周囲に衝撃を与えます。
 

キャビテーションによる影響

次に、ポンプにキャビテーションが発生したら、ポンプにどのような影響があるかを解説します。
 

異音・振動

キャビテーションにより発生した衝撃波により、ポンプの音や振動が発生します。
キャビテーションの音のイメージは、ちょうどヤカンのお湯を沸騰したときに出るコトコトという音をもっと激しくしたような音を思い浮かべていただければ良いと思います。
また、衝撃波がランダムに発生しますので、振動には周期性がなく、ランダムになります。

エロージョン

先述の通り、キャビテーションが発生すると、周囲に衝撃を与えます。
この衝撃波に長時間にわたり晒されたポンプや配管は、徐々に表面が損傷していきます。
キャビテーションを受けた表面はザラザラになり、さらに進行すると穴が開くこともあります。
まるでボディブローのように、じわじわと機器に影響を与えます。

ポンプの性能低下

ここまでの説明は、発生した気泡が比較的小さく、初期段階のキャビテーション(初生キャビテーション)の話をしてきました。
キャビテーションがさらに進行すると、ポンプの内部が蒸気で満たされることにより、ポンプの揚程の低下や流量の低下などの性能低下がみられるようになります。
さらに進行すると、もはや水を汲み上げるという機能を果たさなくなり、最後には運転不可能となります。
 

キャビテーションを防ぐ方法

キャビテーションの発生原理とポンプに対する影響がわかりましたので、最後に、キャビテーションを防ぐ方法を解説します。
キャビテーションの発生原理のところで説明した通り、ポンプ内部で圧力が低下し、飽和蒸気圧力を下回ることが原因ですので、これらを抑える必要があります。

ポンプ入口圧力を上げる

ポンプ内部で圧力が低下しても、飽和蒸気圧力まで低下しないように、あらかじめポンプに吸い込む水の圧力を上げておく方法です。
具体的な方法は、ポンプの吸込み水を貯めるタンクの位置を高く設置すること、吸込み水の水位を高く保つこと、ポンプの設置位置を低くすること、吸込みタンクに窒素などのガスで加圧することなどが考えられます。

より具体的には、NPSHを考える必要がありますが、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

圧力低下を抑える

ポンプの吸込み圧力を変えられない場合は、圧力降下を抑える必要があります。
これは、使用するポンプを変更する必要があるかもしれません。
圧力降下を抑えるために、揚程や流量の少し小さいタイプのポンプを選定する、揚程の小さいポンプを2つ直列に設置し、ポンプ一つの圧力降下は低くする、あるいは、単段ポンプから多段ポンプに変更する、などの方法が考えられます。
 

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