みなさんこんにちは
みなさんは、「回転ポンプ」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。回転ポンプと聞いて、その構造をイメージできる方は多くはないかもしれません。
この記事では、回転ポンプとはどんなものか、その原理と種類について解説します。
なお、ここで解説する回転ポンプは、容積式ポンプの一種としての回転ポンプです。
回転ポンプとは?
回転ポンプと聞いて、プラントで一般的によく用いられる渦巻ポンプをイメージする人もいるかもしれません。または、モータの回転によって駆動するポンプ類全般を「回転ポンプ」とイメージする人もいるかもしれません。
しかし、動作原理により渦巻ポンプとは区別されますし、モータ駆動のポンプ全般を回転ポンプとは呼びませんので、注意が必要です。
回転ポンプは容積ポンプの一種として分類されます。
「容積式ポンプ」の種類には、「往復ポンプ」と「回転ポンプ」があります。「往復ポンプ」は往復運動によって容積変化を生み出して流体を運んでいますが、これを回転運動へ発展させ、容積変化で流体を運ぶようにしたものを「回転ポンプ」と言います。回転ポンプは英語ではRotary pumpと呼ばれます。
なお、「渦巻ポンプ」などのターボ形ポンプも回転運転によって流体を運んでいますが、これらは回転ポンプとは呼ばず、「遠心ポンプ」と呼んでいます。似たようなイメージの言葉なので紛らわしいですが、動作原理が異なりますので注意が必要です。ちなみに、遠心ポンプは英語でCentrifugal pumpと呼ばれます。
回転ポンプの原理
先ほどご説明したように、回転ポンプは容積式ポンプの一種であり、容積変化を利用して流体を運んでいます。また、往復ポンプを発展させたものと考えることができます。
ちなみに、往復ポンプの動作原理は以下です。
① 容積を増やす (膨張) ➡ 流体を吸込む
② 容積を減らす (収縮) ➡ 流体を吐出す
往復ポンプの一例として、灯油ポンプでの動作原理です。
往復ポンプについては別の記事で解説しています。
ここからは、回転ポンプの動作原理を往復ポンプと比較しながら解説していきます。
ポイント1:容積の変化は連続的にエリアを分けて
往復ポンプでは、「① 容積の増やして流体を吸込む」ことと、「② 容積を減らして流体を吐出す」ことを往復運動によって順番に行っていましたが、回転ポンプはこれらの運動を、回転運動の中で連続的に作り出すようにしています。
一例として、回転ポンプの一種であるギアポンプを使って解説します。ギアポンプは以下のように、歯車を2つ組み合わせた構造のポンプです。
引用元:ウィキペディア
ギアポンプの場合、ギアが噛み合いから離れるところ(上図で上部エリア)は容積が増えるエリアとなり、圧力が低下して吸込む力が発生しています。またギアが噛み合うところ(上図で下部エリア)は容積が減るエリアとなり、圧力が増加して吐出す力が発生しています。
つまり、往復ポンプでは、吸込みと吐出しの動作を分けて行っていましたが、回転ポンプでは、吸込みと吐出しの動作を「同時に、エリアを分けて」行っています。
以下の動画は、ギアが噛み合いから離れるエリアで圧力が下がり、流体を吸い込んでいる様子がよくわかります。
引用元::Youtube(FPRG)
ポイント2:逆止弁は不要
往復ポンプでは、ポンプの機能を保つためには、2つの逆止弁がセットとなっています。2つの逆止弁の役割は以下です。
<吸込み側の逆止弁>
一度、吸込み側からポンプへ吸込んだ流体を、再び、吸込み側へ吐出すことを防ぐため。
<吐出し側の逆止弁>
一度、ポンプから吐出し側へ吐出した流体を、再び、ポンプへ吸込むことを防ぐため。
一方、回転ポンプでは、吸込みと吐出しの動作を別のエリアで行っているため、前後に逆止弁は必要ありません。
回転ポンプの種類
ここから回転ポンプの種類について解説します。回転ポンプには主に、ギアポンプ、ベーンポンプ、スクリューポンプがあります。
ギアポンプ
ギアポンプは歯車を2つ組み合わせた構造のポンプです。歯車ポンプとも呼びます。
引用元:ウィキペディア
既に解説した通り、ギアが噛み合いから離れるところ(上図で上部エリア)は容積が増えるエリアとなり、圧力が低下して吸込む力が発生しています。またギアが噛み合うところ(上図で下部エリア)は容積が減るエリアとなり、圧力が増加して吐出す力が発生しています。
以下の動画は、流れるイメージがわかりやすいです。
引用元:Youtube(Hydraulic and pneumatic systems)
実は私は恥ずかしながら、ギアポンプで流体の流れる場所は歯車の噛み合い部分だと思っていました。つまり、製麺機でローラーの間から面が出てくるようにイメージしていました。実際には上の動画のように、流体は吸込み側から外周部分を通って吐出し側へ流れることがわかります。
ベーンポンプ
ベーンポンプのベーン(Vane)とは、「羽根」や「翼」を意味する言葉です。
ロータに溝があり、そこにベーンが挿入され、回転による遠心力でベーンが円周方向へ飛び出す構造になっています。しかし、ベーンは一回転する中で一様に飛び出しているのではなく、ケーシング側と偏心をつけたり、ケーシング側を楕円にするなどして、ベーンが飛び出し量を変化させています。
この構造により、ベーンが飛び出し始めるエリアを吸込みエリア、ベーンが押し戻されるエリアを吐出しエリアとし、流体を運んでいます。
ベーンポンプの原理は、以下の動画がわかり易いです。
引用元:Youtube(Viking Pump)
スクリューポンプ
スクリューポンプはねじポンプとも呼び、ねじの螺旋状の構造を利用しています。
ねじを回すとねじが軸方向へ移動して行きますが、軸方向へ動かないように固定しておくと、螺旋状の構造が動いていくのがわかります。流体をこの螺旋状の構造の中に入れて運ぶ仕組みがスクリューポンプです。
スクリューポンプは容積式ポンプの一種ですが、ギアポンプやベーンポンプが容積変化によって圧力の変化を生み出しているのとは少し異なっており、スクリューポンプは容積そのものが移動することで流体を運んでいます。
以下の動画で、螺旋に乗って流体が移動するのがよくわかります。
引用元:Youtube(Tsurumi Pump)
まとめ
この記事では、回転ポンプとはどんなものか、その原理と種類を解説してきました。
- 回転ポンプは、往復ポンプと同じで「容積式ポンプ」の一種。
- 往復ポンプでは、容積変化を吸込みと吐出しに分けて行うが、回転ポンプでは、容積変化を連続的にエリアを分けて行う。
- 往復ポンプでセットだった2つの逆止弁は、回転ポンプには不要。
- 回転ポンプには、ギアポンプ、ベーンポンプ、スクリューポンプがある。
参考になればうれしいです。
ご指摘・ご質問・ご要望などあれば遠慮なくお問い合わせください。